2013年7月16日火曜日

「分かりやすい」と「改行」の話

○前置き
 こう見えても私は高校・大学と7年間文芸部に所属して――何かの賞を取ったことはないのですけれどね――また大学では表象文化論を専攻したということもありまして、長い間いわゆる小説と言うものと付き合ってきた訳ですが、最近縁あって齧った本の袖に書いてありました「分かりやすい」と言う言葉が妙に引っ掛かりまして、ここに記そうと思った次第なのですが――決して本の内容については記しません――まあついでにと「改行」のことも記そうと考えて、こうしてあれこれ記している訳です――本当は作品世界についてのあれこれを記したいのですけれど考えたことをすぐに書かないと忘れてしまう質なので。


○「分かりやすい」
 さて、上を読んでおそらく大半の方が「分かりにくい」あるいは「読みにくい」と思ったはずです。考えられる原因としては、
・文章が長い
・一文の中に多くの情報が入っていて混雑している
・ダッシュが多くて中心となる文が明確でない
等々が挙げられると思います。
 実際にそれらの点をクリアすれば、分かりやすい文になるかと思いますが、では小説における「分かりやすい」とはどのようなことを指すのでしょうか。

 「分かりやすい」という言葉を見た時、果たしてどのようなことを思い浮かべるでしょうか。
・平易?
・簡単?
・小学生でも分かる?
……etc
 もっと出て来るでしょうからこのくらいにしておいて、「分かりやすい」と言うとそんな類のことが連想されると思います。
 では、小説において「分かりやすい」とはどのようなことかを考えますと……
・物語の内容が簡単に理解出来る
・語彙が平易で文章の意味がすぐに理解出来る
・難しいことでも噛み砕いて説明されている
以上のようなことが出て来るでしょうか。

 突然ですが、ここで疑問を提示します。
“小説において「分かりやすい」は絶対に必要な事柄でしょうか?”
 この問い掛けに多くに人は
「え、分かりやすい方が多くの人が読んでくれるんじゃないの?」
「小難しいことが書いてあったら読まないよ」
と、おっしゃるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。
 確かに、難しいことが羅列されているよりも、「分かりやすい」ことが書かれている方が読みやすいですし、多くの人が取っつきやすいでしょう。けれども、「分かりやすい」文章、もっと言えば「分かりやすい」書き方というのは、あくまでも書く為の手段と言えます。

 例えば、主人公が小難しいことを延々と考えている状況があるとします。主人公は寝ても覚めてもうんうん唸って難しいことを考えています。それなのに、文章の方で「分かりやすく」書いてしまっては、読者はどうしてそんなに考え込んでいるのか理解出来なくなります。
 なら「主人公は難しいことを懸命に考えている」とでも書けば良いって?
 それも一理ありましょう。しかしながら、それでは難しいの程度が読者によってそれこそバラバラになってしまいます。もちろん、読者の解釈を一様にすることは不可能ですが、作者としては主人公が感じている難しさの方向を指し示さなければなりません(特殊事情がない限り)。何故なら、作者がそれをやめた時、小説は単なる作者の見聞きした都合の良い夢物語になってしまうからです。

 また、「分かりにくい」小説でも長生きしている小説も多くあるかと思います。例えば……例の奇書?ちょっと違いますが、「この本は難しくてよく分からないけれど、何故か惹かれる」というものがいわゆる読書家には一冊くらいはあるでしょう。

 「分かりやすい」は小説にとってはあくまでも手段。ですから「分かりやすい」こと自体が評価の対象となっている作品を見た時は、評価した人が小説のことをよく理解していないと考えて期待しないようにしましょう。
 そして、実際に書かれている方は、「もっと分かりやすく書いて」と言われても、「そこは敢えて分かりにくくしているんだ」と反論しましょう。当然、不必要に難しく書くのはダメですけれどね。


○「改行」
 どうして「分かりやすい」の話と一緒に改行を記すのかと言いますと、改行なく文章が続いているよりも、改行がされている方が何となく読みやすく感じたりすることがあるからです。
 一切の根拠はありませんけれど、改行にはそこで文の性質が変わることを伝える役目があるからだろうと勝手に解釈しています。

 それで、本題ですが、最初から申し上げますと、改行はあくまでも手段です。つまり、極論を言えば改行無しでも良い訳です。まあ、そんなことをやられたら改行しろと言いたくなってしまいますが、改行によってどのような効果が表れるのでしょうか。

 例えば、20行くらい段落が続いた後に改行し、短文を置いて改行して再び20行――こうなりますと間に置いた短文が目立つことになります。
 あるいは、改行によって前の文章とは内容的にも時間的にも切れることを示すことが出来ます。

 このように、改行は小説を書く上での表現の一手段でありまして、安易な改行はご法度であります。


○後記
 まあ、あくまでも私見ですけれどね。

0 件のコメント:

コメントを投稿