2021年6月12日土曜日

アタシ再生産

卒業目前の第99期生に再びキリンからの着信が――

劇場版少女歌劇レヴュースタァライトを観ました。
相も変わらず歌劇に相応しい演出でした。
華恋達の言動はもとより、舞台装置のギミックは本作品でしか見られないでしょう。

物語は卒業目前ということもあり、舞台少女としての覚悟を問う試練。
色々と拗らせている組み合わせが多数ですが、テレビアニメ版からはかなり成長しているなと感じられます。
そして、華恋とひかりの出会いと約束、ひかりがロンドンに行った後の華恋のエピソードなど、より深く華恋の原動力が描かれています。

早く観た方が良いです。









列車は必ず次の駅へ――

   では舞台は?
  あなたたちは?

キリンからの意味深なメッセージ。
このメッセージを着信してから再びレヴューが始まります。
決闘組み合わせは、「香子 vs. 双葉」「純那 vs. なな」「まひる vs. ひかり」「クロディーヌ vs. 真矢」「華恋 vs. ひかり」。
みんなそれぞれに対して拗らせた感情を抱いていた。

「香子 vs. 双葉」は、双葉の力を認めつつも、今までの関係性を崩したくない香子とあくまでも香子の横に並ぶ関係になりたい双葉との闘い。
香子は自分の感情がしょうもないことを重々理解した上で、双葉を挑発するような台詞回しで、双葉の覚悟を試してくる。レヴューの演出もその通りで、双葉を問い詰める。
本当に拗らせカップル。
最初に巻き込まれていたクロちゃんが可愛い。

「純那 vs. なな」は、驚いた。自分の舞台から逃げていると糾弾するばななに対して、純那があそこまで泥臭い闘いをするとは思っていなかった。
最初は偉大な作家達の言葉を借りて闘うが、ばななの力に圧倒され、自刃を要求される。しかし、最後は自分の言葉で立ち上がり、弓は折れてもばななの刀を持って何度も立ち上がって闘う。
流石のばななもこれには困惑。しかし、そのある種の醜態を晒してまで自分の舞台を勝ち取ろうとする執念が純那にはあるのだと、観客も含めて思い知る。結果、純那が勝つ。何処かターボ師匠やテイオーを彷彿とさせる組み合わせ。

「まひる vs. ひかり」は、ひかりちゃんに戦意が無いので、毛色が違うレヴュー。ひかりちゃんが自主退学になった理由をまひるちゃんに告白することで、ひかりちゃんが乗り越える場面。
それにしてもひかりちゃんを追い詰める様は、愛する人を取られたヤンデレそのもの。本人は演技だと言っていたが、果たして本当だろうか……。
東京五輪の会場はこちらです。

「クロディーヌ vs. 真矢」は、控え室から始まる。控え室でクロちゃんは自分に覚悟が足りなかったのだと吐露し、チェスもどきで真矢様を圧倒していることから、既に勝ちが決まっていたのではないか?
レヴュー本番では、最初こそ力が拮抗していたように見えたが、真矢様の舞台少女としての圧倒的なキラめきがクロちゃんを敗北手前まで追い詰める。
やはり真矢様は強い、と感心したが、「This is Tendo Maya...」の勝ち台詞の瞬間に、ポジションゼロが閉じるとは思わなかった。
弾かれた金釦を口に含んでいるとは誰が思ったか。
その後は、自分は何の役でも満たすことの出来る虚ろな器と言う真矢様に、実際の真矢様を告げて、勝つのだから、クロちゃんの観察眼、頭の切れ、狡猾さが良く表れている。
このレヴューでクロちゃんが悪魔役を演じていることは、なかなかに憎い。
また、チェスもどきで何度も惨敗する真矢様は、本当に負けず嫌いだ。

「華恋 vs. ひかり」は、レヴューというよりもかつて交わした約束の再認識。
舞台少女としての華恋ちゃんが怖くなり、退学したひかりちゃん。まひるちゃんにより華恋ちゃんを再生産すべくレヴューに臨む。
一方の華恋ちゃんは所謂燃え尽き症候群。スタァライト後の目的が見えないままでいた。
そんな華恋ちゃんにかつての約束を思い出させ、再生産させる。
ここで重要となるのが、ひかりちゃんとの関係性で、二人の出会いや約束、今までの華恋ちゃんが描かれる。
思っていた以上に、華恋ちゃんは直向きにひかりちゃんとの約束を守ろうとしていた。
だからこそ再生産が叶うのだと、感じた。
二人でトップスタァを目指すとはまさに東京タワーがポジションゼロに刺さること。なるほどと感心した。
初志貫徹と言えば簡単だが、それを遂行するには、自分自身の再生産が必要なのだ。

第99期生の彼女達のレヴューを観て、色々と刺さるものがあったのは、趣味とはいえ物書きとしての自分をまさしく再生産すべきと感じたからで、しっかりせねばと強く思った。
しかも、本作品の出来が良いのだから、なおのこと。
頑張りたいものだ。


キリンのメタ発言はわかりません。